巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀

理念やロマンをもつ部下を使いながら、理念なき事業構築ブルドーザーである正力松太郎は、次々に事業を作り上げてきた。

観客は”理念”を求めて野球場へくるわけではない。一流選手の一流プレーを見るために、野球場へやってくる。正力の新聞経営得者としての特質は、大衆の思考を敏感にかぎわける天才的な”興行師”としての資質に最もよく収斂されていた。

理念がない、せっそうがない、といえばホリエモンともかぶるところである。その大きな違いは、大衆へどのように還元するかの大義名分がない、もしくはそれを演出しきれていないところだろう。それがないがために、正力松太郎のように興行師とはよばれずに、単なるピエロ、自分の金を増やすことしか考えていない金の亡者、と言われてしまうのだろう。

しかし、柴田が当初の想定していたテレビ「網」という壮大な計画には驚かされる。